2013年12月27日金曜日

年間ベスト廃盤レコード2013(その3)



Dick Hyman Mary Mayo ‎/ Moon Gas / 1963
   スペースモンドの超名盤!世紀の珍盤!のっけからシーケンサーにエコーが掛かった世界初(?)のダブビートに頭イカれます。初期の電子音楽は現代音楽的な少し小難しいものが多いものの、本作みたくポップス的な何かに電子イディオムを落とし込んだのは、他にレイスコの「Soothing Sounds For Baby」くらいしか浮かびません。



Harald Sæverud, Jan Henrik Kayser ‎/ Harald Sæverud / 1981
   ノルウェーの作曲家Harald Sæverudの作品集。A面はピアノソロ、B面はピアノコンチェルト。特にピアノソロの方が素晴らしい。派手さはないのですが、5線譜にそって水彩絵具を垂らしていったかのような透明感のある澄んだ楽曲はこれまでに聴いた事の無い響きでした。




The Concert Co.,  ‎/ Something For Everybody's Mother/ 1974
   個人的に今年のキングオブ100円レコ。詳細は不明ですがライナーから...NYのヒッピーカルト集団が作ったミュージカル音楽のようですが、各所に散りばめられた美メロたちに拍子抜けしました。特に「みんなカリフォルニアに行っちまった」とか歌ってる(?)A-3は本当に最高すぎるので、お金持ちになったら7インチシングルカットしたいです。B面は組曲。


Alan Skidmore Quintet / TCB / 1970
   UKジャズの重鎮テナー奏者。モード、フリーで手詰まったと思われたそれまでのアフロアフリカンなジャズから吹っ切れ自分たちの言葉で自分たちの音楽に組み直した!というのにエネルギーを感じました。John Taylor Trioをバックにアグレッシブな演奏を聴かせますが、A-2でしっかり落としてくる辺がイギリス人らしくて憎いです。



Rabindra Danks / All I See Is You / 1973
   名門TakomaのSSW部門DEVIより発表された全2枚のレコードのうちの一枚。余りに大好き過ぎて自分が出たラジオで「好きな曲をかけて良い!」と言われたときはこれのA-1を回しました。ところで彼はこのアルバムを出して以来、音楽の世界から足を洗ってしまったようで消息がわかりませんが...日本在住のポップアート画家に同姓同名の人物がいるので、まさか....



Kevin Roth ‎/ Somebody Give Me Direction / 1976
   アメリカの良心Folkwaysより。ダルシマー奏者、SSW。小編成のフォーキーで地味な演奏に彼の男臭いボーカル、実に味わい深いその余韻に浸りながら盤をひっくり返せば聴こえるダルシマーに絡む(Weather Report期のZawinulみたいな)moog!肩すかしを食らいます。一歩間違えてるものの、いやこれが絶妙にかっこよい。それからまた何事も無かったようにアコースティックな演奏に戻ります。




László Sáry ‎/ The Voice Of Time / 1990
   ハンガリーが誇るミニマルの巨匠László Sáry。国営レーベルから発表されたとはにわか信じ難い。A-1の爆音ミニマルは完全にとんでます。A-5の口笛が入る静かなピアノの小曲もおもしろい。他にも女性コーラスによるミニマルカノンやシンキングボールを使った瞑想音楽など...ラストのストリングス曲は短いドローンがひたすら繰り返され静かに境界が淀んでいきます。


Alain Goraguer ‎/ La Planète Sauvage / 1973
   René Lalouxのアニメ映画「La Planète sauvage」のサントラ。音楽を手がけたAlain Goraguerはもともとバップなど演奏していたピアニスト、アレンジャーだが、ここで聴けるのはアニメの世界を体現したヘビーサイケプログレ。



 Archimedes Badkar ‎/ Badrock För Barn I Alla Åldrar / 1975
   今年の収穫と言えばやはりこのバンドとの出会いであります。60年代、ドルフィーやオーネットなどアフロアメリカンのフリー系ミュージシャンが欧州へ傾れ込む。ここで現地の若いミュージシャンたちに与えた影響は図りし得ない。BadkarのメンバーたちはDon Cherryが北欧スウェーデンで活動していた際に交わっている(この時の映像が奇跡的タージマハル旅行団の記録映画の一コマに残されている!)。そんなスウェーデンのアンダーグラウンドなミュージシャン、Per Tjernberg、Bengt Bergerなどを中心に結成されたのこの世にも奇妙な音楽を奏でるバンド。北欧トラッドからバルカン音楽、アラビア音楽、アフリカ音楽、フリーインプロ、ミニマル、ジャズ、ロック、フォーク、サイケ...半端じゃない完成度のチャンポン音楽。
 さてさて一般に世界中のあらゆる音楽を呑み込み昇華させた2ndが名盤と誉れ高いですが、この荒削りな1stも最高です。音楽的な含みも然ることながら、音響遊びさせてもセンス良いです。ちなみにA面B面ともに最後にループトラックが刻まれています。うーんこの音楽リアルタイムにどう評価されたのか興味深いです。




Judee Sill ‎/ S.T. / 1971
   最後の一枚はこちら。今年のご褒美に買いました。



 というわけで、今年入手した廃盤レコードから選んだ「年間ベスト廃盤」はこれで30枚出揃いました。レコード買うために不規則な食生活を余儀なくされ今年は常に風邪を拗らせていました。もう少しレコード以外の事も考えられれば幸せになれたのかなと思いましたが、これはこれで悪くないです。

岡田


2013年12月21日土曜日

年間ベスト廃盤レコード2013(その2)


 昨日に引き続き10枚ほど。


Moolah ‎/ Woe Ye Demons Possessed/ 1974
   NYのデュオ。生楽器とテープやエコーを用いた理解不能の(エセ?)宗教コズミックミュージック。渦巻くサイケデリックに「汝は悪魔に取りつかれた…」。



Arbete & Fritid  / Hall Andan / 1979
   スウェーデンのMNW界隈の兄貴分のラストアルバム。ラリライサイケからアメリカーナを思わすグッドフォーク、ジャズロック、ミニマル、即興、グループのこれまでのキャリアを凝縮したかのような密度の濃い内容。バンド名の訳は「労働と余暇」。



 Albert Marcoeur / S.T. / 1974
   フランスのザッパことAlbert Marcoeur 。友人のアメリカ人ミュージシャンに薦められた一枚。「マジアレンジクレイジーダヨー!ビョーキミュージック!」とか言ってたっけ。おならの音とかすごいよく録れてる。



Annette Peacock / Sky-skating  / 1982
   Paul Breyとの電子ジャズアルバムをはじめ、多くの珍盤を世に送る特殊シンガー。She Ye Ye Recordsのレビューで「全編まるで100年の時空を越えて響いてくるようなセピア色のメランコリーに満ちた夢の世界。」と紹介されているが、まさにそんな音。不思議なレコードです。是非再発を!



Samuel Barber, Ned Rorem / Songs of Samuel Barber and Ned Rorem / 1978
   アメリカ音楽の200年間を100枚のアルバムでまとめ上げるというテーマのもと、1975年に設立されたNew World Recordsより。アメリカを代表する2人の作曲家の作品を一面ずつ収録。透明感のある美しい楽曲たちは21世紀も色褪せません。



Entourage Music and Theatre Ensemble / S.T. / 1973
   謎の音楽集団。中世古楽ともミニマルミュージックとも似て異なる神秘的な彼岸ミュージック。傑作!



Led Zeppelin ‎/ Houses Of The Holy / 1973
   いわずと知れたスタジアムバンドの名盤。今年は中学生ぶりにこのバンドをよく聴きました。ジミーは本当に素晴らしいアイデアマンと感じる。。最高!!!


C.O.B. / Spirit Of  Love / 1971
   ブリティッシュフォークの名盤。アフリカや中近東での旅で体現したトランス感覚。侘び寂びのシンプルな楽曲たちが深い酩酊感を与える。



Nels Cline & Eric Von Essen ‎/ Elegies / 1981
   Wilcoの賛否両論リードギタリストの初リーダー作。全編アコースティックギター片手にコンテンポラリーな演奏を繰り広げる。これを聴くとNelsの印象が大分変わるかと...


Gene Nordan / Drinkin' Wine In The Summer / 197?
   詳細不明のピアノSSWの自主盤。お金があったらいわゆるA&M的大袈裟なソフトロックなんかやったのだろうが、ロウナーなSSWに潤沢な制作費がある訳でもなく、、しかしそれが絶妙な塩梅を効かせていたりする盤が100枚に1枚くらいあるのがマイナー盤の面白いところのひとつ。ここに納められている「Thinkin' Of You」という曲がとにかく秀逸であります。ちなみに、僕の持っている一品はご本人(?)のサイン入りです!

2013年12月20日金曜日

年間ベスト廃盤レコード2013(その1)


  今年もたくさんレコードを買いました。その中でも気に入った盤を10枚ずつ、3回くらいに分け、年間ベスト的なノリで簡単に紹介してみようと思います。誰も得しないのは百も承知で、年内、気が向いた時に書いていこうと思います。

 今年は出来るだけ聞いた事も見た事も無い、ジャケット眺めただけで頭が飛んでしまいそうな盤を努めて収集して参りました。どこか人見知りでお世辞にも優等生とは言い難いけれど、アシッドでユーモラスな愛すべき盤たちがこの世には星や塵の数ほど存在するのに気づかされました。いやはや、レコード飽きるより先に寿命が尽きるのだろうな。

 本来年間ベストなるものはジリジリ順位付けされるが当然だが、音楽評の順位なんてそんなの毎日気分によりけりだし、なんせ面倒なので割愛。仲良く30枚並べて行こうと思います。それでは
                                          岡田


  Sanger Om Kvinnor / S.T. / 1971
   スウェーデンのヒッピー歌劇集団Fickteaternによる女子フォークバンド。MNWから発表。 Archimedes BadkarのBengt Bergerや、Arbete och FritidのTord Bengtssonらが参加。


 Monte Dunn & Karen Cruz / S.T. / 1969
    米セッションミュージシャンMonte Dunnが妻と組んだデュオ。ソフロ、フォーク、ボッサ。A-4はミラクルソング!Bruce Langhorne、Hal Blaine参加。


  Sindelfingen / 'Odgipig / 1973
   プライヴェート・プレスのオリジナル盤はわずか99枚しか作られなかった(もちろんこちらはリイシュー)。英のフォークロックバンド。バロックやジャズ的要素を取り入れた個性的すぎるセンスは今聴いてもかなりオルタナ。


  Michał Urbaniak Constellation / In Concert / 1973
   ポーリッシュジャズシリーズ。ジャズバイオリン/サックス奏者のライブ盤。バンド全体はエレクトロマイルスの影響大だが、Patty Wataers張りの気狂いボイスを出してみたり、謎のぽこぽこパーカッションを奏でる妻の存在感大。


  Roger Shriver / S.T. / 1972
   レーベル創設者のGary McFarlandが 1971 年に急逝し、存続が怪しくなっていたSkye最後のリリース作。腕利きの都会的なセッションマンに囲まれると、妙にイナタく感じるRogerは当時24歳の学生だった。


  Emerson's Old Timey Custard-Suckin' Band / S.T. / 1970
   世紀の奇人変人レーベルESPより発表された、何の変哲もあるブルーグラス。


  ORA / S.T. / 1969
   UKフォークグループ。こちらも自主盤とは思えぬクオリティーの高さ。浮遊感。


  Rena Rama ‎ / Jazz I Sverige /1973
   我らがBengt Berger、ECMなどで既に作品を残していたBobo Stensonなど参加。北欧らしいモーダルなジャズロック。所々匂わすオリエント感はプロトBadkar。


  Karen Dalton / It's So Hard To Tell Who's Going To Love You The Best / 1969
   アシッドフォーク名盤。A-1は今年のベストトラック。


  
Elodie (Timo Van Luijk & Andrew Chalk) / Echos Pastoraux / 2011
   バグパイプ、ギター、琴、フィールドレコーディングなど用いた瞑想ドローン。

2013年10月29日火曜日

Hans Reichel - Wichlinghauser Blues (FMP 0150)

  Derek Baileyはリズムやメロディはもとより、一切のフレーズを拒否することによって、音楽を解体しというならば、Hans Reichelは楽器そのものを文字通り解体した事により、ギターという楽器の持つ前衛表現の幅を拡大させた。


 サックス奏者Peter Brötzmannらによる西ドイツの前衛ジャズレーベルFree Music Production(FMP)より、73年作。Reichelにとって初めての作品。


 Baileyは膝においたギターを抱え、右手にピック、左手はフレット上に踊らせるというあくまでオーソドックスな奏法であったのに対し、Reichelの演奏は全て彼の自作、または自らの手によって改造の施されたギターを持ちい、辛うじてギターは肩からぶら下げられているものの、両手の機能は全くユニークなものであった。演奏中に弦の乗るブリッジを移動させ、その両側を使って演奏したり、通常ギター本体に固定されているピックアップを手に持ち、それを弦に擦り付けたり、タッピングらしきフレットをピアノのように叩く音も聴かれた。自作楽器でいうなれば、2本のアコースティックギターのボディを切り捨て、そのネックを張り合わせ、ピックアップで繋いだギターを作った。発想がユニーク、というかカオス。言葉だけだと全くイメージが湧かない物ばかり。
 彼のHPでは自作の楽器の遍歴、効用がキュートなアニメーションにのせ分かりやすく紹介されているのでお時間あれば是非→http://www.daxo.de/

 同時代に「楽器の持つ機能の解体」に着眼したのはAMMのKeith Roweくらいだろうか。10年後にJohn Zornは様々なリード楽器のマウスピースをテーブルの上ところ狭しと並べ、凄まじい早さでそれらを交互に吹き散らかし、Christian Marclayはレコードが乗ったターンテーブルで即興演奏をした(もちろんHip Hop的語法でない)。高柳昌行はテープやオーディオ機器、電気ドリル、ハンマー、そしてテーブルに寝かされたギターを用い、壁に塗られた塗料が剥がれ落ちるほどの凄まじい音量で、高柳1人によるオーケストレーションを行った。



 さてさて、話が横道に逸れたが、Reichelは前衛音楽でまだ楽器奏法の開拓が行われていた70年代前半から「楽器の解体」に目を向けていた数少ない演奏家の1人ではないか。後の音楽性はもう少しニューエイジよりと感じるのだが、ここではその語法の模索中ゆえの実験精神に富んだ10の即興演奏が聴ける。

 A面初めのアコースティックギターを使ったエキゾチックで琴のような演奏は後の方向性をかいま見せるものの、ボディに張られたピックアップと手で弦を擦り付けているピックアップがステレオ出力された(?)ノイジーな演奏はArto Lindsayとドリルを片耳ずつ突っ込まれたかのようなスリリングさ。思わず「針飛びか!」とヒンヤリさせられた。


 このアルバム気に入ったよ。

岡田

2013年8月11日日曜日

Folke Rabe - Was?? (WER 60047)


 「芸術は反発とユーモアの中から生まれるのだ」と、常日頃、信じている。


 「Was??」。北欧ノルウェイ出身の音楽家Folke Rabeの67年作。ドイツの現代音楽を主に扱うレーベル「wergo」より。最初のミニマルドローンではなかろうか
 
 ライナーがなかなか興味深かった。所々かいつまみながら


 Rabeについて。写真左の人物。

 1935年生まれ。そのキャリアはジャズオーケストラのトロンボーン奏者として始まる。

 その後ストックホルムの音楽学校で作曲を学んだ。瞬く間に才能は開き、室内楽奏者として各地の国際音楽祭で演奏、指揮者として活躍。作曲家としては室内楽、合唱曲、ラジオやテレビの放送音楽、そして電子音楽を。さらに詩作、ダンサー、俳優として舞台に立つ事もあった。

 彼の音楽学習はいわゆる近代ヨーロッパ音楽の技法とは全く無関係な地点から始まったのだろう。彼は多領域に渡る幅広い実践活動から、自身の音楽世界を育んだのであろう。



 LPではA面まるまる25分間、電子音が鳴り響く。彼にとっての音楽は音響現象そのものの体験、鳴り響く音そのものに聴き入る事を切り離しては成立し得ない。記譜法に依存して意味を獲得するようなヨーロッパの伝統的な芸術音楽のあり方を疑問と思った。世界にはもっと多様な音楽のあり方がある。そして当然、実際に響く音に聴き入る事のみが意味と価値を生み出すような音楽にとっては、従来の「ひとりよがり」なヨーロッパの音楽観は無縁の存在となる。


 さて本作にあらためて針を落とそう。

 ハーモニックな響きで作られている。少しずつ入り乱れ、移り変わりを繰り返して変化していく。機械は本来筋肉を持たないが、この豊かな響きに「息づき」を見た。
 Rabe自身ハーモニックな響きを選んだのは「そこからたっぷりとした心地よさが生じるからであり、さらに部分音がその響きの内部での物理的相互作用によってある種の幻覚作用を生むからだ。」と、とめどなく続く響きという形態をを選んだのは「おだやかな響きの中にひたっての発見の旅を可能にするるためであり、またまさしくそういった素材の中から作曲したからだ。」と述べている。


LPは持っていたが、半分のテンポに落とした50分版「Was??」が収録されているCDを海外から取りよせた。

岡田

2013年7月8日月曜日

Bruce Langhorne - The Hired Hand



 ここまで音数を丹念に絞り込んだ音楽も稀である。ラングホーンほど「弾かないギタリスト」という言葉がしっくりくる演奏家いないだろう。

 デュランの「Bring It All Back Home」や「Blonde On Blonde」での客演で知られるラングホーン。名曲「ミスター・タンブリン・マン」とはスタジオでデッカいタンブリンを振り回していた彼がモチーフだそうで。


 本盤は1971年に公開、「イージーライダー」のピーターフォンダ初監督作品「さすらいのカウボーイ(The Hired Hand)」のサントラ。ビデオテープの音源をそのままマスタリング、版権諸々適当にリリースしたようなCDは昨今出回っていたが、2012年米scissortailrecordsより1000枚限定でプレスされたもの。

 こちらはオリジナルのマスターテープを使ったのか非常にクリアな音色。またCD盤の「高速道路のお土産」のようなジャケットから一変、映画からのカットを使った非常にスタイリッシュなものに。


 全編ラングホーン1人で幾多もの楽器が演奏、オーバーラップされてゆく。オープンチューニングを施したバンジョーやギター、そしてたゆたうフィドルやアナログシンセの音色は1969年のガレージ宅録音源とにわかに信じ難いほど、美しく、アーシーで、音響的であり、ミニマルで、そして曲の短さやその陰影的で捕らえ所の無いメロディもあいまって、余りに儚い。
 
 同じくアメリカーナを代表し、由緒正しき継承家としてだけでなく近年音響ギタリストとしても再評価されるJohn Faheyなんかとはかなり近い畑ながらも正反対の印象。

 しかしどの楽器を演奏させても独特な音色、スタイルであるが、そこには彼の身体的なハンディが関係している。ギタリストとしてはおろか、楽器演奏家としては致命的であろう、左の指2本の自由が利かないという。ギターなら繊細なフィンガリングが要求される、弦を押さえる方の左手がだ。


 この事実を耳にした時思わず「うーむ」と唸ってしまった。


 同じく左手の自由が利かない天才ギタリスト
Django Reinhardtは自身の障壁を見事に乗り越え最高にホットな演奏を数多く世に残した。しかしラングホーンの演奏はそのハンディを乗り越えるでなく、受け入れたように感じる。慈愛に満ちた繊細で儚い彼のスタイルは、自身を見つめ直した末の悟りの境地と勝手に思っている。


 映画もとても良かった。実に男臭くて。
 
 何はともあれ、在庫あと僅かのよう。地球上で1000人もの人がこの音楽の素晴らしさを共有しているなんて素敵な話。この至極地味でそこぬけに美しい音楽を。。

岡田








2013年6月4日火曜日

6月の演奏

2013/6/15(土)
吉田ヨウヘイgroup『From Now On』レコ発企画
渋谷7thFloor
open18:30/start19:00
adv¥2000/door¥2300
出演:吉田ヨウヘイgroup、森は生きている、ROTH BART BARON
開演前act:發展(18:45〜19:15)

2013/6/16(日)
代官山ロックフェスティバル2013
晴れたら空に豆まいて/山羊に聞く?
open12:00/start12:30
adv¥3900/door¥4500(+drink¥500)
出演:あがた森魚 、ある意味フェスティバル宇宙人 、アン・サリー×南博   、伊藤多喜雄(with佐山雅弘/堀越彰)  、上野雄次(花いけパフォーマンス)、木下美紗都、下山(Gezan)  、昆虫キッズ  、chanson sigeru  、ジョンジョンフェスティバル  、TOURS  、双葉双一  、森は生きている  、山本精一  、DJ 王家の紋章、DJ KΣITO  、DJ スッパマイクロパンチョップ 、DJ holy、DJぷりぷり(浅草橋天才算数塾)
http://mameromantic.com/?p=20758

2013/6/23(日)
下北沢インディーファンクラブ2013
詳細未定
http://www.indiefanclub.com

2013/6/29(土)
DUM-DUM PARTY
渋谷O-WEST BUILDING(O-WEST・O-nest・7th FLOOR 三会場同時開催)
open/start 15:00
ticket ¥6300
出演:Mouse on Mars(ドイツ)、OORUTAICHI、快速東京、きのこ帝国、group_inou、SIMI LAB、下津光史(踊ってばかりの国)、スカート、砂原良徳(DJ)、ミツメ、森は生きている、YAMAGATA TWEAKSTER(韓国)、Kamikazoo(Clockwise)、LANG LEE(from韓国)、ダエン(from福岡)、渋家(shibuhouse)Exclusive、Ned Collette (From Australia)」、DJ Yogurt、OGRE YOU ASSHOLE、…and more!
http://party.dum-dum.tv

2013年5月1日水曜日

Edward Vesala - Nan Madol



ECMに良質な作品を残しているフィンランドのジャズ・ドラマーEdward Vesalaの76年作。
ここでは打楽器のみならず、フルートとハープも演奏している。録音自体は74年。

Don Cherry、Bengt BergarのBTBB的音世界にアンビエントな北欧フリー色をより強めたサウンドとでも言おうか...いやしかしフォーキーであり、そして非常にエスノだ。


とりあえずメンバーのクレジットを

Edward Vesala (ds,per,fl,harp) 
Juhani Aaltonen (ss,ts,fl,bells,voice) 
Kaj Backlund (tp)
Elisabet Leistola (harp) 
Teppo Hauta-Aho (b) 
Juhani Poutanen (vln) 
Sakari Kukko (fl) 
Mircea Stan (tp) 
Seppo Paakkunainen (ss) 
Pennti Lahti (ss) 
Charlie Mariano (as,snagasvaram,fl) 

知っている人物は皆無。
そういえばECM盤ながら、プロデューサー「Manfred Eicher」の表記が無く、替わりにミキシングとしてクレジットされている。


寒国の張りつめた空気感の中を透き通る音色。
最高のオーガニックトリップミュージック。


岡田

2013年4月15日月曜日

Eberhard Weber - The Colours Of Chloe


 ECMほどベーシストという言わば「縁の下の力持ち」にスポットをあてたレーベルは無いのではないか。

 Dave Holland、Arild Andersen、Gary Peacockなどと並びECMを代表するベーシストの1人ドイツ出身Eberhard Weber。

 Pat Methenyの2nd「Watercolors」、Ralph Towner「Solstice」で聴ける、Jaco Pastoriusのそれとは全く異なる趣のエレクトリックフレットレスベース(Weberは縦弾きアップライト)を奏でてる人と言えばピンとくる人もいるか。



 こちらは74年作ジャケットは妻Maja Weber によるもの。良いジャケ。

 Weberによるコントラバスとチェロのスピリチュアルな多重録音1人弦楽奏に始まり、中盤でお馴染みの音色5弦アップライトベースのソロにピアノ、ドローンが絡んでいく1曲目「More Colours」
 
 2曲目は「The Colours Of Chloe」。こちらも弦楽奏で始まるものの、ここでドラムが入りだんだんとジャズ風...むしろ後ろで薄く鳴るムーグはポスト音響派以降のようで。印象的なテーマを奏でるムーグの音なんかは後にPat Metheny Groupの色を決定的にするLyle Maysのよう。いや一聴電子音に聴こえるこの音、クレジットに載るWeberのオカリナなのかな...
 このアルバムで最もポップな印象。数あるECMの名曲の中でも個人的に10指に数えられるお気に入り。
 
 そしてまたもや重奏な弦楽奏で始まる、3曲目は「An Evening With Vincent Van Ritz」。突然鳴るリズミカルな4ビート。ベースラインとフリューゲルホルンはキレキレ。ここでA面終了

くるりとレコード盤をひっくり返し...

 B面は20分の大曲1曲のみ。4曲目は「No Motion Picture」。五月雨の如く続くエレピ、シンセによるミニマルなフレーズ。
 白夜夢をみてるかの如くいろいろな景色、風景が現れては消える。そして、またイントロのフレーズに戻る。そしてまたいろんな幻想が次々と。美しくも幻想的な。そしてまたミニマルフレーズに戻る。実にプログレッシブな1曲。聴き応えありやす。

 とA面3曲、B面1曲入りという構成。



 裏ジャケにはお馴染み共鳴胴の無い5弦アップライトベースを操る師の姿が。


    
 今月は個人的にECM月刊とし、同レーベルのレコードを十数枚購入したが、粒ぞろいのECM作品群の中でも個人的にもっとも印象に残る作品となった。

 エレクトロニカ、ポストロック以降の耳にこそ改めて新鮮に響く音楽だと思う。

岡田

2013年4月12日金曜日

Robbie Basho - Venus in Cancer

「古池や 蛙飛びこむ 水の音」なんて句を詠んだ俳聖がいた。俳諧師「松尾芭蕉」は日本人だけでなく、海外の人からも注目度は高い様で、とりわけケルアックやギンズバーグなど、東洋思想に強い関心を示したビート作家たちの多くもリスペクトしている。

 Daniel Robinson, Jr. もビートジェネレーション、ビートニク最盛の50年代アメリカで青春時代を送り、東洋思想に触れ、更には日本文化に影響され絵画や作詞を始めた根っからのビート青年であった。大学3年生の時メキシコ製の12弦ギターを手にし音楽の才能を開花させた。
 
 日本文学の一つ、俳諧に魅せられ青年は、自国のフォークミュージックと、東洋思想を融合、アメリカの広大な大地を感じさせる牧歌的雰囲気を感じさせつつ、日本独特の美意識の1つである『わび・さび(侘・寂)』を彷彿とさせるような新たな仙人世界を切り開く。そして青年は、自らを「Robbie Basho(芭蕉)」と名乗る。


 こちらは1969年作。ベールは68年に設立されたばかりのBlue Thumb Records。ちなみにその音楽性からも納得、John Faheyとの交流もあり1stからその後何枚かはTakomaより発表。



 A面1曲目タイトルにもなっている「Venus in Cancer 」から既にその精神世界は渦を巻く。サティにも通ずるようなアンビエントな世界感。しかし安易なヒーリングミュージックと一線を画すのはその精神性「侘、寂」のも再構築されたものであるからか。

 まるで12弦ギターを和琴のように操るA面3曲目なんかはもろに日本文化に影響されたであろうもの。


 まさに、仙人のようだ。山小屋に一人こもり、この世の事象あらゆる事を見極め、そして山も川も大地も水も、あらゆる自然を愛したピュアな仙人。

 その後もコンスタンスにアルバムを発表、80年代はレーベルとの契約も切れたものの自主制作のカセットテープなども世に出したが、惜しくも志し半ば86年にひっそりと亡くなる。

 同志John Faheyは90年代に入ってすぐジムオルークの影響もあり再評価されたのだが、Bashoは2000年代に入るまで長らく忘れ去られた偉大なる音楽家の1人となる。

岡田

2013年4月11日木曜日

Archimedes Badkar - Archimedes Badkar II

  先日、友人の勤めるレコードへひょこりと遊びにいった時に、「おもしろいのあるよ」とおもむろにターンテーブルに乗せられたのがこの一枚。

 何とも捕らえ所の難しい作品であるが少し文章を書いてみる。

 
 1972年に北欧はスウェーデン、ストックホルムで結成された大所帯バンド。スウェーデン地下音楽、即興コミュニティーの中で結成された。

 Don Cherryが70年代初頭に北欧ジャズ行脚した際、彼らと交流している模様。
 
 北欧トラッド、フォークからプログレ、アフロ、中近東、ラーガ、バルカン、果ては現代音楽、チェンバー、ミニマル(そういえばDon Cherryとの競演ではTerry Raleyの楽曲が取り上げられていました...)、ドローンまで、地球上の音楽すべてを消化したしたといっても過言ではない...というと言い過ぎかもしれないがとにかく凄まじいチャンポン感。

 そして本作は最も実験的と言われている(?)2枚組2nd、76年作。


いやはや見開きがいがあります。下段に写るメンバーのツラの良さがまんま音楽に現れていると感じる。

 エスノ香るマンドラかオウドかの音色が、そしてチェロのドローン、アフロパーカッション、針を落とし1分もすれば部屋の中は宇宙空間に。頭の中で「とかとんとん」が鳴り出す。

 そういえば、近年CDで再発された幻の1stはジムオルークが解説を書いたそうで。

岡田