僕がDerek Baileyという男の名前を知ったのは、ギターを初めてかなり早い段階で、今考えるとおかしな話であるが小学校6年生の2月に。当時なけなしの小遣いで買っていたギターマガジンの誌面上にて。
2004年2月号、僕のアイドルだったジョンレノン特集の裏でひっそり「ノイズギターの世界」なるものが掲載されてた。インタビューが、JOJO広重さん、大友英良さん、そして締めが灰野敬二さん、という凄まじい企画。今後2度と無いであろう。
そこで初めて、フルアコを抱えたとても地味な出で立ちの彼を目にした。
偉大なる世界一謙虚なイギリス人ギタリスト。
僕には生粋のアバンギャルドな素質があったのか、小学生の時からジミヘンのテープコラージュやビートルズの「レボリューション9」なんかをカセットテープで繰り返し繰り返し聴いていて、よくエルレガーデンが好きな姉に「気を違えたのではないか」と心配されたものである。高校1年の頃、初めて触ったMTRで作ったのも大半が短波ラジオとエフェクターを駆使したおかしないわゆるノイズミュージックだった。
しかしそれはいわゆるビートルズ、ジミヘンを初めとしたロック勢からの影響で、Derekの音楽に面と向き合うようになったのは、高校3年の初め、Jim O'rourkeと出会ってからだ。彼のフェイバリットミュージシャンに挙げている2人のうち1人はJohn Faheyという奇天烈変人。そしてもう1人がDerekだった。
図書館でECMのレコード発掘に勤しんでいたジム少年が、偶然Derek Baileyの「The Music Improvisation Company」というレコードに出会う。この虫の音のような断片の音楽をどう聴いたのか興味深い。
ともあれその「虫の音のような」ギターの虜になったジム少年は、シカゴからイギリスのデレクへとファンレターを書き、10代の初めに渡英し直接会いに行ったという。すごい話である。
ともあれそんな訳で僕はDerekと再会した。高校3年の春に。
メンバーをざっと紹介すると、
Derek Bailey (G)
Evan Parker (SS)
Hugh Davies (Electronics)
Jamie Muir (Percussion)
Christene Jeffrey (Voice)
うむ!最高!
…とここまでだらだらと退屈な文章を書いたのだが、このレコードについて書き表すというのは僕にとって余りにも難しすぎる。
この水たまりを打つ雨粒のような音楽は、瞬間に空気を揺らし、しっぽを掴もうと手を伸ばしたその時にはもうそこには存在しないのだ。何一つとして捕まえる事が出来ない。
''When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again.''
なんて言った男の事を思い出した。
岡田
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