2013年2月7日木曜日

Georgie Rizzo - Georgie Only Me !

 我ながらジャケ買いをするに当たっての勘が鋭いらしく、特にSSWものでは「Tony Kosinec」や「Jay Bolotin」、「Cross Country」、そして「The Floating House Band」など、それまで名前も聞いた事なかった上物を幾つも引き当てて来た。(知ってる人は知っているものばかりですが…)
 
 SSWものは率先してジャケからもわもわと放たれる何がしに意識をそばだて購入するようにしている。


 さてさてこちらもレコード屋の棚から異様なる雰囲気を放っていた1枚。モノクロジャケに僕は甘い。

 裏のラインナーをもとにこのGeorgia Rizzoという男について簡単に紹介する。

 14人兄弟の末っ子として生まれたRizzo。経済的に厳しい家庭に育ったようで6歳から地元の雑貨店で働いていた。貧しい生活はそう簡単には変わらない。そんな日々働いて飯食って寝ての悶々としたサイクルから彼を解き放ったのがたまたま手にしたギターと音楽であった。
 その世界にすっかり魅了された彼は、仕事と仕事の合間、寝る間も惜しんで、作曲活動に没頭する。それらの楽曲たちを携え、地元のロッジやカフェなどで演奏してたという。時にはつまらぬ飲んだくれ相手に。
 
 このレコードはそんな労働を転々としながらヒッチハイクするかのようにたゆたう生活の中、音楽という心の拠り所を見出した1人の男の生涯唯一の作品である。

 12弦アコースティックギター片手にフォーキーかつメロウグルービンな楽曲たちを持ち前のファルセットで歌い上げるRizzo。とにかく楽曲がどれも秀逸である。本当に豊かな心の持ち主であったと感じる美しき楽曲たち。
 ベース、ドラム、ピアノにGeorgieの12弦ギターが乗っただけのシンプルな編成ですが実に素晴らしい演奏が繰り広げられておりこちらも本盤の聴き所。
 ファルセットで似通った声の持ち主、JTなんかと並べられる事もよくあるようだが、こちらは前途で述べた生活環境もあいまってか、圧倒的にロンサムで心の深い所に突き刺さる、個人的に。そして時々はち切れんばかりにかき鳴らす12弦の響きになぜだか涙腺をひどく揺さぶられる。長くレコードを聴いてここまで何かに心動かされたのは初めてかもしれない。

 個人的にとても良い時期に聴けた。

 
 これからの時代音楽家は職業として成立するのか、はたまた労働者のライフスタイルという形で定着するのか。これはあくまで一つのやり方。

岡田



2013年2月6日水曜日

George Barnes - Guitar Galaxies



 卓越したセンスにも関わらず、昨今の音楽シーンはおろかジャズギターの歴史からも完全に黙殺されている不遇なギタリストGrorge Barnesの1960年作。ラテンアルバム。
 圧倒的な技術、未知なる音への探究心、そしてユーモラスな作品群たち、まさにギター界のレイスコと言えるのでは!(実際にRaymond ScottやDick Hyman辺の奇人変人音楽家たちと交流もあったようである。)

 さて本盤、この手のレコードにしては珍しく見開きジャケ。開いてみるとレコーディングスタジオの図が載っているのだが…


 何だこのギタリストの数は!!!
 
 そう、一聴するとLes Paulのような多重録音に聴こえるこのギターサウンドは11人のギタリストによる人力オーケストレーションなのである。
 当時からテレビやラジオ、そして数々のセッションワークに引っ張りだこであったBarnes氏。ちょっと小銭も貯まった事だしいっちょ面白い事やるか!なんてNY中のセッションミュージシャンを集めたのだろうか。おそるべし
 
 スピーカーの前に正座すると、左右にパンの振られたギターたちの音色が本当に心地よく右から左から聴こえてくる。ギター盤ビッグバンドアレンジ。ギャラクシーの名に恥じぬ実に宇宙的なオーケストレーションである。

 収録曲は「Tequila」、「Cumana」といったパーカッシブなラテンチューンを主に。Barnesのオリジナル曲も1曲収録されていおり、こちらもなかなか素敵なボレロ(?)風の1曲。

 最近は40、50、60年代のこの手の音楽ばかり聴いている。針を落とした瞬間に楽しくて楽しくて踊りだしたくなるレコードばかりである。

岡田

2013年2月5日火曜日

Buddy Miller - The Majestic Silver Strings

 Bill Frisell、Marc Ribot、Greg Leiszという「くせ者弦楽器奏者」を従えた、現代カントリーシーン最重要人物Buddy Millerの2011年作。
アメリカーナという言葉がこれほどまでにしっくりくるレコードは近年そうそう無いのではという一枚。


 ギター弦のパッケージを模したジャケット。
「Premium Quality, Silver Wound Music, Heavy Gauge」。何ともシャレが効いております。



趣味の良い古いアメリカの映画館へ迷い込んだかのような1曲目のワルツチューン。空間を自在に行き交うペダルスチールの音色、気がつけば古い映画で見たアメリカーナな街並にタイムスリップしたような錯覚を受ける。映写機がカタカタと立てている音に吸い込まれていくような。

 しかしここはJohn Zorn、The Lounge Lizards、NY地下出身の奇人2人に、Bon Iverなどの作品にも参加する世界で最もオルタナなスチール奏者が集まっているのだ。ただのカントリーミュージックで終わる訳が無いとだけ付け加えておく。
 

 オルカン、アメリカーナファン必携レコ。



 こんな風に歳取りたい。

 岡田