2013年12月27日金曜日

年間ベスト廃盤レコード2013(その3)



Dick Hyman Mary Mayo ‎/ Moon Gas / 1963
   スペースモンドの超名盤!世紀の珍盤!のっけからシーケンサーにエコーが掛かった世界初(?)のダブビートに頭イカれます。初期の電子音楽は現代音楽的な少し小難しいものが多いものの、本作みたくポップス的な何かに電子イディオムを落とし込んだのは、他にレイスコの「Soothing Sounds For Baby」くらいしか浮かびません。



Harald Sæverud, Jan Henrik Kayser ‎/ Harald Sæverud / 1981
   ノルウェーの作曲家Harald Sæverudの作品集。A面はピアノソロ、B面はピアノコンチェルト。特にピアノソロの方が素晴らしい。派手さはないのですが、5線譜にそって水彩絵具を垂らしていったかのような透明感のある澄んだ楽曲はこれまでに聴いた事の無い響きでした。




The Concert Co.,  ‎/ Something For Everybody's Mother/ 1974
   個人的に今年のキングオブ100円レコ。詳細は不明ですがライナーから...NYのヒッピーカルト集団が作ったミュージカル音楽のようですが、各所に散りばめられた美メロたちに拍子抜けしました。特に「みんなカリフォルニアに行っちまった」とか歌ってる(?)A-3は本当に最高すぎるので、お金持ちになったら7インチシングルカットしたいです。B面は組曲。


Alan Skidmore Quintet / TCB / 1970
   UKジャズの重鎮テナー奏者。モード、フリーで手詰まったと思われたそれまでのアフロアフリカンなジャズから吹っ切れ自分たちの言葉で自分たちの音楽に組み直した!というのにエネルギーを感じました。John Taylor Trioをバックにアグレッシブな演奏を聴かせますが、A-2でしっかり落としてくる辺がイギリス人らしくて憎いです。



Rabindra Danks / All I See Is You / 1973
   名門TakomaのSSW部門DEVIより発表された全2枚のレコードのうちの一枚。余りに大好き過ぎて自分が出たラジオで「好きな曲をかけて良い!」と言われたときはこれのA-1を回しました。ところで彼はこのアルバムを出して以来、音楽の世界から足を洗ってしまったようで消息がわかりませんが...日本在住のポップアート画家に同姓同名の人物がいるので、まさか....



Kevin Roth ‎/ Somebody Give Me Direction / 1976
   アメリカの良心Folkwaysより。ダルシマー奏者、SSW。小編成のフォーキーで地味な演奏に彼の男臭いボーカル、実に味わい深いその余韻に浸りながら盤をひっくり返せば聴こえるダルシマーに絡む(Weather Report期のZawinulみたいな)moog!肩すかしを食らいます。一歩間違えてるものの、いやこれが絶妙にかっこよい。それからまた何事も無かったようにアコースティックな演奏に戻ります。




László Sáry ‎/ The Voice Of Time / 1990
   ハンガリーが誇るミニマルの巨匠László Sáry。国営レーベルから発表されたとはにわか信じ難い。A-1の爆音ミニマルは完全にとんでます。A-5の口笛が入る静かなピアノの小曲もおもしろい。他にも女性コーラスによるミニマルカノンやシンキングボールを使った瞑想音楽など...ラストのストリングス曲は短いドローンがひたすら繰り返され静かに境界が淀んでいきます。


Alain Goraguer ‎/ La Planète Sauvage / 1973
   René Lalouxのアニメ映画「La Planète sauvage」のサントラ。音楽を手がけたAlain Goraguerはもともとバップなど演奏していたピアニスト、アレンジャーだが、ここで聴けるのはアニメの世界を体現したヘビーサイケプログレ。



 Archimedes Badkar ‎/ Badrock För Barn I Alla Åldrar / 1975
   今年の収穫と言えばやはりこのバンドとの出会いであります。60年代、ドルフィーやオーネットなどアフロアメリカンのフリー系ミュージシャンが欧州へ傾れ込む。ここで現地の若いミュージシャンたちに与えた影響は図りし得ない。BadkarのメンバーたちはDon Cherryが北欧スウェーデンで活動していた際に交わっている(この時の映像が奇跡的タージマハル旅行団の記録映画の一コマに残されている!)。そんなスウェーデンのアンダーグラウンドなミュージシャン、Per Tjernberg、Bengt Bergerなどを中心に結成されたのこの世にも奇妙な音楽を奏でるバンド。北欧トラッドからバルカン音楽、アラビア音楽、アフリカ音楽、フリーインプロ、ミニマル、ジャズ、ロック、フォーク、サイケ...半端じゃない完成度のチャンポン音楽。
 さてさて一般に世界中のあらゆる音楽を呑み込み昇華させた2ndが名盤と誉れ高いですが、この荒削りな1stも最高です。音楽的な含みも然ることながら、音響遊びさせてもセンス良いです。ちなみにA面B面ともに最後にループトラックが刻まれています。うーんこの音楽リアルタイムにどう評価されたのか興味深いです。




Judee Sill ‎/ S.T. / 1971
   最後の一枚はこちら。今年のご褒美に買いました。



 というわけで、今年入手した廃盤レコードから選んだ「年間ベスト廃盤」はこれで30枚出揃いました。レコード買うために不規則な食生活を余儀なくされ今年は常に風邪を拗らせていました。もう少しレコード以外の事も考えられれば幸せになれたのかなと思いましたが、これはこれで悪くないです。

岡田


2013年12月21日土曜日

年間ベスト廃盤レコード2013(その2)


 昨日に引き続き10枚ほど。


Moolah ‎/ Woe Ye Demons Possessed/ 1974
   NYのデュオ。生楽器とテープやエコーを用いた理解不能の(エセ?)宗教コズミックミュージック。渦巻くサイケデリックに「汝は悪魔に取りつかれた…」。



Arbete & Fritid  / Hall Andan / 1979
   スウェーデンのMNW界隈の兄貴分のラストアルバム。ラリライサイケからアメリカーナを思わすグッドフォーク、ジャズロック、ミニマル、即興、グループのこれまでのキャリアを凝縮したかのような密度の濃い内容。バンド名の訳は「労働と余暇」。



 Albert Marcoeur / S.T. / 1974
   フランスのザッパことAlbert Marcoeur 。友人のアメリカ人ミュージシャンに薦められた一枚。「マジアレンジクレイジーダヨー!ビョーキミュージック!」とか言ってたっけ。おならの音とかすごいよく録れてる。



Annette Peacock / Sky-skating  / 1982
   Paul Breyとの電子ジャズアルバムをはじめ、多くの珍盤を世に送る特殊シンガー。She Ye Ye Recordsのレビューで「全編まるで100年の時空を越えて響いてくるようなセピア色のメランコリーに満ちた夢の世界。」と紹介されているが、まさにそんな音。不思議なレコードです。是非再発を!



Samuel Barber, Ned Rorem / Songs of Samuel Barber and Ned Rorem / 1978
   アメリカ音楽の200年間を100枚のアルバムでまとめ上げるというテーマのもと、1975年に設立されたNew World Recordsより。アメリカを代表する2人の作曲家の作品を一面ずつ収録。透明感のある美しい楽曲たちは21世紀も色褪せません。



Entourage Music and Theatre Ensemble / S.T. / 1973
   謎の音楽集団。中世古楽ともミニマルミュージックとも似て異なる神秘的な彼岸ミュージック。傑作!



Led Zeppelin ‎/ Houses Of The Holy / 1973
   いわずと知れたスタジアムバンドの名盤。今年は中学生ぶりにこのバンドをよく聴きました。ジミーは本当に素晴らしいアイデアマンと感じる。。最高!!!


C.O.B. / Spirit Of  Love / 1971
   ブリティッシュフォークの名盤。アフリカや中近東での旅で体現したトランス感覚。侘び寂びのシンプルな楽曲たちが深い酩酊感を与える。



Nels Cline & Eric Von Essen ‎/ Elegies / 1981
   Wilcoの賛否両論リードギタリストの初リーダー作。全編アコースティックギター片手にコンテンポラリーな演奏を繰り広げる。これを聴くとNelsの印象が大分変わるかと...


Gene Nordan / Drinkin' Wine In The Summer / 197?
   詳細不明のピアノSSWの自主盤。お金があったらいわゆるA&M的大袈裟なソフトロックなんかやったのだろうが、ロウナーなSSWに潤沢な制作費がある訳でもなく、、しかしそれが絶妙な塩梅を効かせていたりする盤が100枚に1枚くらいあるのがマイナー盤の面白いところのひとつ。ここに納められている「Thinkin' Of You」という曲がとにかく秀逸であります。ちなみに、僕の持っている一品はご本人(?)のサイン入りです!

2013年12月20日金曜日

年間ベスト廃盤レコード2013(その1)


  今年もたくさんレコードを買いました。その中でも気に入った盤を10枚ずつ、3回くらいに分け、年間ベスト的なノリで簡単に紹介してみようと思います。誰も得しないのは百も承知で、年内、気が向いた時に書いていこうと思います。

 今年は出来るだけ聞いた事も見た事も無い、ジャケット眺めただけで頭が飛んでしまいそうな盤を努めて収集して参りました。どこか人見知りでお世辞にも優等生とは言い難いけれど、アシッドでユーモラスな愛すべき盤たちがこの世には星や塵の数ほど存在するのに気づかされました。いやはや、レコード飽きるより先に寿命が尽きるのだろうな。

 本来年間ベストなるものはジリジリ順位付けされるが当然だが、音楽評の順位なんてそんなの毎日気分によりけりだし、なんせ面倒なので割愛。仲良く30枚並べて行こうと思います。それでは
                                          岡田


  Sanger Om Kvinnor / S.T. / 1971
   スウェーデンのヒッピー歌劇集団Fickteaternによる女子フォークバンド。MNWから発表。 Archimedes BadkarのBengt Bergerや、Arbete och FritidのTord Bengtssonらが参加。


 Monte Dunn & Karen Cruz / S.T. / 1969
    米セッションミュージシャンMonte Dunnが妻と組んだデュオ。ソフロ、フォーク、ボッサ。A-4はミラクルソング!Bruce Langhorne、Hal Blaine参加。


  Sindelfingen / 'Odgipig / 1973
   プライヴェート・プレスのオリジナル盤はわずか99枚しか作られなかった(もちろんこちらはリイシュー)。英のフォークロックバンド。バロックやジャズ的要素を取り入れた個性的すぎるセンスは今聴いてもかなりオルタナ。


  Michał Urbaniak Constellation / In Concert / 1973
   ポーリッシュジャズシリーズ。ジャズバイオリン/サックス奏者のライブ盤。バンド全体はエレクトロマイルスの影響大だが、Patty Wataers張りの気狂いボイスを出してみたり、謎のぽこぽこパーカッションを奏でる妻の存在感大。


  Roger Shriver / S.T. / 1972
   レーベル創設者のGary McFarlandが 1971 年に急逝し、存続が怪しくなっていたSkye最後のリリース作。腕利きの都会的なセッションマンに囲まれると、妙にイナタく感じるRogerは当時24歳の学生だった。


  Emerson's Old Timey Custard-Suckin' Band / S.T. / 1970
   世紀の奇人変人レーベルESPより発表された、何の変哲もあるブルーグラス。


  ORA / S.T. / 1969
   UKフォークグループ。こちらも自主盤とは思えぬクオリティーの高さ。浮遊感。


  Rena Rama ‎ / Jazz I Sverige /1973
   我らがBengt Berger、ECMなどで既に作品を残していたBobo Stensonなど参加。北欧らしいモーダルなジャズロック。所々匂わすオリエント感はプロトBadkar。


  Karen Dalton / It's So Hard To Tell Who's Going To Love You The Best / 1969
   アシッドフォーク名盤。A-1は今年のベストトラック。


  
Elodie (Timo Van Luijk & Andrew Chalk) / Echos Pastoraux / 2011
   バグパイプ、ギター、琴、フィールドレコーディングなど用いた瞑想ドローン。